23.05.09 24.04.03 更新

卒業生ランジェリーブランドMaimia(マイミア)が5周年!デザイナー神成舞さんが語るブランドの軌跡

学生インタビュー
東京校

2016年にバンタンデザイン研究所 キャリアカレッジをご卒業後、2018年よりランジェリーブランドMaimia(マイミア)をスタートさせた神成さん。

今では西武百貨店渋谷店・松屋銀座店に常設スペースを構える他、阪急百貨店うめだ本店や名古屋ジェイアールタカシマヤなどでポップアップストアを開催するなど、着実にエリア拡大を広げてきたMaimiaですが、試行錯誤しながら歩んできたこれまでの5年間を振り返り、最新コレクションのお話しまでうかがいました。

―――ブランド5周年おめでとうございます!こうやってインタビューさせていただくのも5年振りですね。

ありがとうございます。

ブランド立ち上げ間もなくインタビューにお越しいただいた際は、まだ常設場所もなくオンラインとポップアップ展開からのスタートでした。現在は常設スペースも構えることができ、この4月で5周年を迎えることができました。

―――ブランド立ち上げ当時の様子を教えてください。

2018年から2020年頃まではほぼ1人ですべてをおこなっていました。

2020年からはコロナ禍という状況で、旅行などに行く機会もなく集中的に仕事に取り組む期間となりました。ライブ配信を始めたことがきっかけでビジネスが大きくなり、これが西武百貨店渋谷店・松屋銀座店の展開にもつながったのですが、常設店のオープンはいずれもコロナ禍でした。西武百貨店オープン初日は緊急事態宣言になるかならないかのようなタイミングで、ひそやかにスタートしたのを覚えています。

一方で、コロナ禍といういつもと違う状況だったからこそMaimiaのような小さいブランドも皆さんに見つけてもらうことができ、そのおかげでスピード感をもってブランドを拡大してこられたと感じています。

―――コロナ禍でのブランド認知はどのような変化がありましたか?

コロナ禍になり、人々の生活の中でリアルよりもSNSやインターネットに触れている時間が圧倒的に増えたことは大きくブランド認知に影響したと感じています。店舗、広告等マスメディア、SNSといった様々なチャネルがある中、通常であれば仕事帰りに立ち寄ってもらえる路面店や百貨店に店舗がある大手ブランドが認知されやすいですが、コロナ禍という状況ではSNSでのコミュニケーションを積極活用したブランドが認知を増やし成長することができました。

本来人前にでるのは得意ではないのですが、ブランド存続のためにもやらねばという気持ちで取り組み出したのが2020年、Instagramを活用してIGライブをスタートしました。はじめは開始2時間前からスタンバイして、照明や商品の写りなどを確認したり、台本を準備したりと大変なことも多かったものの、思い切りのある性格もあり、やり始めたらお客様とダイレクトにコミュニケーションが取れる良さを知り「もっと早く始めていれば良かった」と感じています。苦手だったことが出来るようになったことで自分自身の成長も感じられました。

SNSでのライブ配信は今もMaimia にとってお客様との大切なコミュニケーションツールのひとつとなっています。

―――お客様とのコミュニケーションでDM上の遠隔フィッティングもされていますね。

IGライブで商品をご紹介する際にコメントで直接質問を受けたりするのでお答えしていて、先行受付でオンライン購入する際もなるべく安心してお求めいただけるよう心掛けています。直接店舗にお越しになれないお客様には、DMでサイズのご相談にのらせていただいています。特にランジェリーは体形に合う、合わないといった悩みが多いので、ブラジャーやドレスの様々な形がある中で、こういう体形の方にはこれがオススメといったようなデザインの構造、形や仕様によってスタッフから選び方のコツをお伝えできればと始めました。海外からのお問合せにも活用できているので、国内外問わず店舗がないエリアの方々の購買にもつながっています。

―――2020年からのチーム発足の経緯を教えてください。

この頃からすべてをひとりでやることに段々手が回らなくなってきました。今以上にブランドを大きくするためには一人では無理だと気づき、メンバーを増やすことを決めました。ここは、スタートアップブランドの大きな分岐点になるところだと思います。ブランドをやっている方々とお話しする機会もあるのですが、多くの方が、ひとりでできる範囲で続けていくのか、仲間を増やして規模を大きくしていくのかという選択で悩んでいます。

正直、利益のことだけを考えれば一人でやっていた方が良いかもしれない。ですが、規模が大きくないと出来ないことがたくさんあるということも知りました。例えば、商品の展開数は、ある程度規模が大きくなり売り上げが見込めなければ、あれも作りたいこれも作りたいと安易に増やすことができません。また店舗展開も売り上げ見込みがなければ叶いませんでした。

何より、私がチームをつくる決断をした一番の理由は、ブランドが大きくなった世界を見てみたいと思ったから。

Maimiaの世界観を多くの方に届けたいという思いで拡大しようと思いました。

―――現在のチーム編成をうかがえますか?

店舗運営が2人、PRが2人、アシスタントデザイナー兼店舗運営が1人、デザイナーが私の6人です。アシスタントデザイナーはバンタンデザイン研究所 キャリアカレッジの卒業生で、並行して店舗運営にも携わっています。

全員揃うのは年1回、新年のタイミングだけで、あとは各々業務に応じて動いています。チーム全体ではグループLINEでコミュニケーションを取り合って日報など業務報告をしているのですが、仕事終わりに“おつかれさま!”“雨だから気を付けてね!”といったコミュニケーションが自然と発生するくらいみんな仲が良いです。

―――チームとなったことで仕事に変化はありましたか?

私だけでは思いつかなかったアイディアがでるようになりました。先日、ブランドアイテムをカジュアルダウンさせたコーディネートを紹介するIGライブをやったのですが、私の発想にはないもので面白いなと感じました。年齢やライフスタイルが異なるメンバーがいることでアイテムの活用シーンが広がったのは新しいトピックでしたね。

デザイン過程では、メンバーに意見を聞くことができるようになりました。今までは自分が可愛いと思っていても、お客様に良いと感じていただけるかが心配で眠れないときもあったのですが、今はアシスタントデザイナーをはじめチームに共有することができるので、自分のデザインに自信をもってリリースすることができるようになりました。メンバーの声を聞いて生産数の目安にもしています。

また、去年まではすべての業務を私が確認しながら進めていたのですが、今年に入ってからはいくつかの仕事は完全にお任せできるようなチーム体制が整ってきました。先日のパリでもDM発送やプレス業務はPRチームが率先して動いてくれました。少しずつ組織体制を整えて、次のステップに進むために私がやるべきことは、新しいことにチャレンジしようと旗を振っていくこと。そういうフェーズに入りました。

―――「STUDIO MAIMIA」というランジェリー×ピラティスの取り組みも新しいですね。

そうなんです。チーム内にピラティスをやっているスタッフがいて、そのスタッフからの提案があり、Maimiaの世界観を広げるという点で面白いなと思いスタートしました。これに関しても、私は賛成という旨だけ伝えて、スタッフ本人が企画をして進めています。会社として、働く人たちにとって「遊び場」のような場所を提供できる会社でありたいなと思っています。

STUDIO MAIMIAを始めたことで、ピラティスを通じてランジェリーやアパレルを綺麗に着こなすための体づくりを相談できる場所ができました。鎖骨や背中などを美しく見せるためのパーツ別ボディメイクの方法をご紹介しています。結果的には、Maimiaを通じてライフスタイルのご提供までできるんだと私が気づかされました。私一人ではなく、スタッフやお客様と一緒に成長できているブランドだと感じます。

―――近年はランジェリーだけに留まらず、アパレルも積極的に展開されていますね。

Maimiaには“The dressed you and the nude you. What about the you in between?”「裸のあなたと服を着たあなたの間の、もう1人のあなたをインスパイアしたい」というメッセージがあり、それを表現するためにもドレス展開が必要だと考えました。

Maimiaのドレスはどれもバストカップがついており、ブラジャー無しで着用できるので大胆に背中が開いているのが特長です。Garden Dress、Clubfloor Dress、Arena Dressと現在3型のドレスを展開しています。

Maimiaの商品展開においては、自分のプライベートで安心できる空間をどこまで外に広げられるかということにチャレンジしていて、その正解は私にもまだわかりません。ランジェリーからスタートしたブランドですが、アパレル展開することで、自分の部屋だけでなく、庭先からクラブフロア、観劇というところまでMaimiaの世界観を広げることができました。皆さんと一緒に少しずつ広げられているのが私自身とても楽しいです。

嬉しいことに、今ではどのチャネルでも売り上げの30%以上がドレスです。

他にもキャミソールやスイムウエア、キャンドルなどランジェリー以外の商品をいくつか展開していますが、闇雲に商品数を増やせば良いということではなく、ブランドコンセプトに当てはまっているかを考えて展開していくことを大切に考えています。

―――オンラインから店舗展開とチャネル拡大していかがですか?

SNSを中心に認知が広がり規模が拡大し、百貨店での店舗展開ができるようになったことで、今まではリーチできていなかった40~60代のお客様に知っていただけたことは大きな変化でした。百貨店でインポートブランドを買われていた40~60代の方々に、同じフロアにあるMaimiaを見つけていただけたのは店舗というチャネルだからこそです。そして、2つ目の常設スペースを松屋銀座店にオープンした頃から、海外展開も見えてきました。

実は松屋銀座店へのオープンを機に「Maimia Japan」と表記するようになりました。まずは日本国内でより多くのお客様へお届けできるブランドにしたいと考えていますが、海外への視野も今後は持ちつつ、ブランドの認知を広げていければと思います。

―――初の海外展開、2023年パリの展示会へも出展されたのですね。

ブランドを立ち上げて1年半経った頃、2019年にアジア最大のランジェリー資材見本市「アンテリフェリエール上海」で開催されたヤングレーベルアワードで3位受賞し、パリの展示会への出展権をいただきました。コロナの影響で2年ほど時間が経ちましたが、ようやく先日実現することができました。

受賞当時の2019年はまだ1人でやっていた時期で、上海へも1人で行ってきました。それから数年が経ち、今回パリへ行くときには5人のメンバーが増えていました。ここまで成長してこられたという実感が湧いてとても感慨深かったですね。

―――パリでの手ごたえはいかがでしたか?

様々なブランドが一堂に会しており、世界中から集まったランジェリーブランドの規模の違いを目の当たりにしたことで、改めて自分がどのくらいの規模のブランドにしたいのかを考えさせられる機会になりました。

大手ブランドは巨大なブースの中でファッションショーをやっていたり、カフェがあったり規模感に圧倒された一方で、出来ないことも多いだろうなとも感じました。例えば、いまのMaimiaで展開している素材では、生産場所や顧客ターゲットも含め大手ブランドで商品化することはおそらく難しい。さらに規模が大きくなると直営店舗だけではなく、卸もでてくるので、卸先の人が説明しやすくて売りやすい商品である必要があり商品展開も今まで通りとはいかなくなることも想定されます。ただ拡大すれば良いということではなく、自分が何を軸にしてどこまで大きくしたいのかを考えなければいけないと突き付けられたように感じました。様々なブランド展開の考え方があるので、店舗は不要だと考えるブランドもあれば、海外展開を先にするブランドもあります。自分のブランドをどうしていきたいかによって変わってくる部分だと思います。

―――2023Spring/Summerの新しいコレクションについてお話をうかがえますか?

今回は、以前、家族と数回訪れた南仏のサン=トロペという場所をテーマにしました。サン=トロペはメゾンブランドがファッションショーをやるほど大きな観光地ですが、海と山に囲まれていて、車かヘリコプターか船でないと行けない場所で決してアクセスが良いとは言えません。だからこそ、よりプライベート感のあるVacationを過ごしたい人が好んで訪れており、20年代にはココ=シャネルが訪れたとして有名で、他にもピカソやダリなど1920年代のパリの文化人たちが夏にはサン=トロペ行くといったように、もともと小さな港町だった所に当時のセレブリティたちがお忍びで訪れていたエクスクルーシブな場所です。

印象的なエピソードとして、当時シドニー=ガブリエル=コレットやフランソワーズ=サガンといった作家たちが、そのプライベート感を気に入って何度も訪れていたサン=トロペだったのですが、観光地として大きくなり有名になったことで、“プライベートな空間ではなくなった”と感じて訪れなくなったそうです。もちろん外なのでパブリックな空間なのですが、秘境の地に自分の親しい仲間だけがいて、ご飯を食べたりお酒を飲んだり楽しむ場所は「心理的なプライベート空間」であり、知らない人の声や姿が入ってきてしまうと途端にパブリックになってしまうのだなと。“自分たちだけが知っている秘密の場所”“プライベートで素朴なVacationを過ごす場所”という点がこの場所の一番の魅力がだったんだ、ということがとても印象的で、これがMaimiaの世界観ともリンクしました。

ここでは、みんな夜でも白い洋服を着て過ごします。日も長くて21時頃まで明るく、みんながVacationできたという感覚を持っているからか、夜は黒やダークトーンのフォーマルな服装に着替えてディナーに行くのではなく、ビーチからあがって、少し休んでそのままラフな格好でレストランに行くのがクールという考え方。素敵なレストランにもあえて着飾らずに素朴に過ごすことがイケてるんですよね。

さらに夜のクラブでも、最先端の音楽が流れるのではなく、80年代90年代の誰もが知っている曲が流れていて、みんなが気張らず楽しく過ごせる場所というのもMaimiaが表現したい世界観と似ていると感じています。

私が訪れた際にも、船から水着姿のエルトン・ジョンが降りてくるのを目撃したり、昨日までここでビヨンセが寝ていたよといった話を聞いたのですが、そんな場所にも関わらず、木漏れ日の下で食べるランチが一番の贅沢だという、古い町並みやローカルさをみんなが大事にしている街なので、今回のコレクションも素朴さを残したデザインにしました。

―――毎コレクションに様々な国の文化やアートやエピソードが詰まっているのもブランドの魅力ですね。

そう言っていただけて嬉しいです。人生のどこかで、皆さんがもしもサン=トロペに行く機会があったとしたら、その時はMaimiaを思い出してもらえたら嬉しいなと思っています。当時は知らなかったけど、時が経って、偶然聞いた曲や訪れた場所の名前に「聞いたことあるな」「Maimiaのランジェリーのタイトルになっていたのはこれだったのか」と記憶が結びつく瞬間があったら素敵だなと感じているので、そうやって時を経ても記憶に残る愛されるブランドになれると良いなと思っています。

サン=トロペは夏の避暑地なので、11月頃にはホテルやレストランは閉まり、「また来年の夏に~」といった具合に期間限定で営業しているんですよね。日本には馴染みがないのですが、サマータイムというか、夏の始まりと終わりがある、そういう感覚が個人的には好きで、今回大阪での期間限定ショップのタイトルを『MAIMIA SUMMER HOUSE in OSAKA』として2023Spring/Summerのコレクションをメインに展開しています。

―――現在、大阪の阪急百貨店うめだ本店で期間限定ショップが開催中ですね。

そうなんです。大阪は今まで数日間のポップアップはありましたが、お休みが合わずにお越しいただけない方もいらっしゃったので、この度『MAIMIA SUMMER HOUSE in OSAKA』と題して夏季の間、直接大阪の皆さんにMaimiaをお届けできるので嬉しいです。並行して、東京の西武百貨店でも5月9日~15日までポップアップストアを開催しています。

―――最後に、今後の展望をうかがえますか?

今のところは日本国内で少しずつ常設店舗を増やしていけたらと考えていますが、まだまだ先かと思っていた海外への展開も、もしかしたら早期に実現できる可能性もあるかもしれません。大きな目標としては海外でポップアップストア開催なんてできたら素敵ですね。

今後もどんな変化があるかわかりませんが、その変化も皆さんと一緒に楽しみながら、パブリックとプライベートの境界線をいちばん遠いところまで広げていけたらと思っています。

常に新しい取り組みを続けているMaimiaの今後の展開が楽しみです。

店舗へもぜひ足を運んでみてください。

ありがとうございました!

【PROFILE】

神成 舞(かんなり まい)

慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程終了後、通訳業に従事。

2016年バンタンデザイン研究所 キャリアカレッジランジェリーデザインコース修了。2018年自身のランジェリーブランド「Maimia(マイミア)」デビュー。

西武百貨店渋谷店・松屋銀座店に常設店を展開のほか、名古屋ジェイアールタカシマヤなどでポップアップストアを開催、大阪・福岡などの老舗ランジェリーセレクトショップでの取り扱いも拡大中。

2019年にアジア最大のランジェリー資材見本市アンテルフィリエール(INTERFILIERE)上海で開催 されたヤングレーベルアワードで3位を受賞し、パリ展示会へも出展。現在、阪急百貨店うめだ本店にて6月末まで『MAIMIA SUMMER HOUSE in OSAKA』として期間限定ショップを開催中。5/9~15まで西武百貨店渋谷店で2023年Spring/Summerポップアップストアを開催。

HP https://www.maimia.jp/

Instagram https://www.instagram.com/maimia_lingerie/

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