22.03.20 24.04.04 更新

卒業生 Kazuhiro Aiharaさんインタビュー第2弾! ~NFTとクリエイティブの未来~

学生インタビュー
東京校

現在、デジタルアーティストとして活動している卒業生 Kazuhiro Aihara(相原一博)さん に、NFTとクリエイターの未来についてお話をうかがいました!

 

 

 

 

ーーグラフィックアーティストからデジタルアーティストへ肩書を変更されたのですね。

 

 

活動は日々変化していくもので、段々とグラフィックという表現にはまらないようになっ てきました。現在の活動が包括的に表現できるようにデジタルアーティストへ変更しました。

 

 

 

ーーアーティスト活動とクライアントワークのバランスは?

 

 

現在は7-8割はアーティスト活動に専念しています。 2010年に独立してからは広告などグラフィックデザインの仕事はやりつつ、作品づくりはずっと続けていました。その中で、自身の作風や、やりたい事があまり日本にフィットしていないと初期の頃から感じており、2016年頃から海外へ向けた活動に切り替えました。 海外へのアプローチのほとんどはSNSを使っています。

 

 

 

ーー相原さんが考えるSNSの有効な活用方法とは?

 

 

ただ作品を発信するだけでは誰も観にきてはくれません。SNSの活用方法は、発信よりも自分の存在を示して積極的にコミュニティの中に入っていくことの方が僕は大切だと思っているのですが、意外とやっていない人が多い気がします。すでにフォロワーが10万人、 100万人もいる人であれば、発信するだけで観にきてくれる確率は高いでしょうが、大半の人はそれだけでは観てもらえないことを前提に動かなければなりません。自分からの発信よりも、自らコミュニケーションをとりにいく、自ら観てもらいたい人を迎えにいくということがはるかに大切だということを僕は経験から学びました。自分の中で仮説を立てて、実験、検証を重ねて戦略的に進めていった結果、現在のようなSNS活用方法に至っています。

 

例えば、僕はこの企業と仕事がしたいという目標を明確に設定します。その1つが2019年 に手がけたNIKE(グローバル)X SACAIのビジュアルキャンペーンです。それはきっと漠然とやっても実現し得ないことだったと思います。ですので、僕はどうやったらNIKE(グローバル)の仕事がとれるのかを戦略的にずっと考えていました。その方法のひとつとし て、自分の作品を発信するだけでなく、NIKEのクリエイティブがどのようにしてアーティ ストやクリエイターを探しているのかを調査していった結果、インスタグラムなどのSNS上で新しいクリエイターを探していることがわかりました。さらにどのような人間がNIKE (グローバル)と関わり、どのようなアーティストを探しているのかという動向を把握することで、アピールする作品をコントロールしていきます。そうすることで徐々に関係者に近い人脈を作ることができるようになり、実際の目標達成がどんどんと近くなってくるというわけです。

 

 

 

ーーとても戦略的ですね!アーティストとしては珍しいのでは?

 

 

アーティストはやはり表現+制作することに重心の大半を置くのが主だと思います。僕はグラフィックデザイン出身で、プロデュースやブランディングの仕事も経験があるのでストラテジック(戦略的)な事は好きなんです。作風に関しても、あくまで自分の作風は維持しつつも、時代の潮流やいま自分のいるデジタルアートの世界の歴史的文脈を大事に考えています。その中で、自分の作風、コンセプト、制作に対する姿勢などが価値を持つかどうかということを常に意識しています。

 

現在、やはり圧倒的に活躍するアーティストやクリエイターたちは、とても戦略的に見えますし、非常に優秀なマーケッターであり、セルフプロデュースが素晴らしい方々が多い です。そう考えると、ただ漠然と作品を発表していくと、目標到達には想像以上に時間がかかってしまうし遠回りになってしまうので、僕は自分から狙ってポジションを取りに行くということを重要視しています。

 

クリエイティブの世界には教科書がありません。僕自身もトライ&エラーを日々繰り返しながら活動しています。実は大方のことは失敗しているんです。でも、その多くの失敗には自身を成長させてくれる重要なことが隠されているので、色々試していく中で上手くいったことはもっと伸ばせるよう努力をし、大半の時間は失敗について日々の研究がクリエイティブなんだと思います。

 

 

 

 

 

 

ーー今後の主軸はアーティスト活動ですか?

 

そうですね。ここがNFTにも繋がってくるのですが、僕は独立してから、ずっとグラフィックデザイン、強いてはヴィジュアルクリエイティブとは何かについて考えています。 何よりもっとも大事にしていることは、何をしていたら自分が幸福に生きていることができるかということです。その答えに最も近かったのが、アーティストというものでした。

 

僕は音楽やファッション関係を中心としながらも、企業広告や地方自治体などのデザインにも関与することが多く、10年以上フリーランスでグラフィックデザインの仕事をしてきました。美大や芸大の出身ではなく、バンタンに通った以外のほとんどを独学で行ってきました。なので、グラフィックデザイン業界やそれにまつわる環境を一歩引いて観察することができていたと思っています。自分のいる世界の良い面も悪い面も自分のなりに考えることができる時間が多くあったと思います。 これはグラフィックデザインの経済面に関してですが、グラフィックデザインの報酬は一度きりのアセットの買い取りが基本です。音楽や小説などは売れれば売れる程ロイヤリティが発生する仕組みが出来ています。グラフィックデザインも、曲をつくる、小説を書 くのと変わらないくらい創造的価値があると考えていいはずなのに、そこにはロイヤリティという概念はほとんど発生しません。これを紐解いていくと、グラフィックデザインが成り立ってきた歴史を考える必要があり、グラフィックデザインとビジネスがどのように成り立っているかという仕組みを学ぶ必要がありました。知っておくべくことのひとつとして、”中央集権制”という小難しい言葉になってしまいますが、社会から国家に至るまでの人間社会の経済システムについて学ぶ必要がありました。そんな時に現れたのがNFTです。NFTというテクノロジーによって何が自分に適していて、何が自分の人生に幸福をもたらすものなのかを気付かされたように思えます。

 

 

 

ーーNFTの活動について教えてください。

 

※NFTとは、「Non-Fungible Token(ノン-ファンジャブル トークン)」の頭文字を取ったもので、日本語で「非代替性トークン」という意味。アート作品などデジタルデータに資産価値を有することができるようになった。

 

 

NTFを簡単に説明しようとすると熟れない言い方をせざるを得ないのですが、要はデジタルデータに改ざんできない自分の署名をつけることができるということです。そうすると真偽を判別できるようになるので、複製が容易なデジタルデータであっても本物と偽物を区別できます。そうすると例えば絵でも写真でも動画でもデジタルデータのまま販売することが可能になります。さらに正式な自分の署名が入っているものなので、自身であらかじめ設定した販売方法やロイヤリティなどのルールをもとに流通することができます。 例えば僕の作品を1万円で買った人が10万円で他の人に転売したとします。その売買の中には必ず自分が設定したロイヤリティを制作者に支払うとルールがあるので、10万円の数%はかならず僕の収益となるわけです。10万円で買った人がさらに誰かに転売したら、その売った金額の数%のロイヤリティが毎回発生し僕の収益として還元され続けます。僕がアーティストとして活動し続けて、作品の価値が上がれば上がるほど、転売されればされるほど、収益が発生するということです。僕たちアーティストがとても生きやすい世界に変わってきています。

 

 

 

ーーNFTによってクリエイターの生き方はどう変化すると考えますか?

 

 

僕が海外中心のSNSコミュニケーションやNFTやブロックチェーンの世界を見て感じているのは、どんどん個の力が重要になってきているなということ。以前までのようにクライアントワークで得た収益に比べて、数十倍以上の収益を自身のNFT作品販売で達成した人をたくさんみてきています。クライアントワークにすべてを頼ることなく、NFTマーケット上で個の市場価値を高めていけば、クリエイターの大きな収入源のひとつになると思います。自身のクリエイティブの相場をはっきり示すことができることによって、クライアントワークにおける価格交渉にも役立ちます。今、成功しているのはYoutuber、インフルエンサーといった個人で経済的価値をはっきりと示せる人たちだと思うのです。企業や組織が個人の能力に期待する時代。いままでとは真逆といえます。NFTはまだ黎明期にあり、もちろんいいことばかりではありません。マーケットが存在すれば、環境の問題や悪いことを考える人もいます。そういったデメリットもしっかり学びながら、個のクリエイターた ちが新しい未来をどんどん切り開いていければいいなと考えています。

 

 

 

ーー今後、クリエイターの活動は世界を視野に入れるべき?

 

 

僕がこれまで世界と向き合ってきて感じたのは、思った以上に世界を活動拠点とする日本人ビジュアルクリエイターの存在は少なく、比例して認知されていないのではないかとい うことでした。そもそも国籍という概念を通して何かを考えるのはナンセンスなのです が、それにしても日本人は海を越えません。日本は内需がとても大きく国内の活動だけで成立するということもあり、言葉の壁もありますね。ただ僕は英語はそんなに喋れませんし、ほぼテキストとリーディングだけでやりとします。でも出来ちゃいます。国内にも能力が高い素晴らしい方々はたくさんいるので、彼らにはぜひ世界に発信してもらいたいです。スポーツと同じように競技者が多い方が市場は盛り上がるし、クリエイター同士が刺激になれば、いいものが生まれる確率があがっていきます。世界の人々は日本のクリエイティブがもっとボーダーレス(開かれたもの)になれば思っているはずです。

 

 

 

 

 

 

ーー現在は、バンタンで講師もしていただいていますね。

 

バンタンの授業で、特に学生に伝えているのは「クリエイターやアーティストとして生き続けること、そして幸せになること」です。スキルを教えることはもちろん大切ですし、 僕ができる限りのことは伝えていきたいと思っていますが、一番伝えたいのはどうしたらクリエイターとして生き続けることができるかということ。

 

バンタンで講師をしてみて、学生がとても良いなと感じるのは、良い意味で優等生でないところ。笑 伸びしろがたくさんあります。すごく良いです。むしろそこがなければ可能性も小さいものになってしまいますから。同時に、社会経験を積むにつれて、現実と向き合わなければならない状況に葛藤している気持ちも伝わってきます。無意識にも社会に適合しすぎた結果、クリエイティブでなくなっていった人をたくさん見てきました。すぐには難しいかもしれませんが、いつか「バンタンで面白い講師がいたな」と思い出してもらって、一歩踏み出すきっかけになってくれたら嬉しいですね。彼らの良さをいかに潰さず将来へ活かし、どうやって幸せに生きていくかを一緒に考えていきたいです。

 

 

 

ーークリエイターにとって幸せな生き方とはどう考えますか?

 

 

僕自身、少ないながらも企業勤めも経験しましたし、仕事としてグラフィックデザイナーをすることも、アーティストとしても経験してみて、個人的にはフリーランスがベストだと思っています。なぜなら自分が最も好きで得意なことにコミットできるからです。自分のやりたいことで企業や会社などに勤めようとした場合、どうしても8~9割の時間と労力が必要でしょう。自身の経験から自分にとって本当にやりたいこと、やるべきことを考えた結果、フリーランスで活動することが最も自分に適していると思いました。特に日本人は安定志向ですし、人それぞれの環境や考え方もあると思うのですが、自分自身の幸福を自分でどう設定するかだと思います。フリーランスはチャンスも多いですが不安とも向き合わなければいけません。そのためには頑張りきらないといけないタイミングや、耐えなければいけないこと、そしてやり続ける大変さなどもあります。すべてにおいて完璧に向き合えというわけではなく、楽しいことも大変なことも少しずつクリアしていくことを楽しめるようになったら、本当にクリエイターとして幸せな人生なのではないかと思います。

 

 

 

ーークリエイターにとって大切なマインドは何?

 

 

圧倒的に暇な時間を作ること、そして行動力を持つこと、でしょうか。

 

あくまで僕自身の場合ですが、忙しすぎる生活はまったくクリエイティブではありません。アイデアを練り上げる、チャンスにすぐ行動を起こせる、自分の人生の価値を高めるためにいかに自分に時間をつくるか、それに尽きると思います。

 

 

 

ーーこれからクリエイティブ・デザイン業界を目指す方へメッセージをお願いします。

 

自分の人生に妥協をしすぎないで、とにかく自分のクリエイティブを信じる。今、世界は クリエイティブに生きる人に有利になってきているはずです。クリエイティブで生きていきたいと思うことは大きなチャンスです。それには個で戦える力を磨き続けて、自分を信じてくれる応援者(ファン)をみつけていってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

【PROFILE】

 

デジタルアーティスト

 

相原 一博 Kazuhiro Aihara

 

 

1979年埼玉県生まれ。 2001年明治学院大学経済学部経営学科在学中、バンタン短期講習を履修しグラフィックデザインを学ぶ。 2002年明治学院大学経済学部経営学科卒業。 2003年横浜にてアパレルセレクトショップをプロデュース、運営。 2005年DesignTide2005実行委員会就任。 2006年株式会社ジョージズファニチュアCIBONE(現/株式会社ウェルカム)入社。 2008年グラフィックデザイナーとして広告代理店に入社。 2010年~現在自身のクリエイティブスタジオ『春十舎/SHUNTO-SHA』設立。主宰。

 

 

ポートフォリオ:

 

オフィシャルWeb http://shunto-sha.com

 

 

略歴:

 

2005年頃からグラフィックデザインを独学で学び始め、2010年よりグラフィックアーティストとして広告デザインを中心に、ファッション、インテリアなどの分野でキャリアを本格的にスタートする。2014年頃より、手がけた作品は、 国際ポスタートリエンナーレ富山(日本)、台湾国際グラフィックデザインアワード(台湾)、モスクワ国際グラフィック デザインビエンナーレ(ロシア)、ブルノ国際グラフィックデザインビエンナーレ(チェコ)、トルナヴァポスタートリエン ナーレ(スロバキア)、ラハティ国際ポスタービエンナーレ(フィンランド)、エクアドルポスタービエンナーレ(エクアドル)などの国際展覧会に招待され、また主要な作品は富山県美術館(日本)をはじめ、国立モラヴィアギャラリー(チェコ) などに永久収蔵されている。2018年頃より活動の拠点を海外へとシフトし、新進気鋭の若きビジュアルアーティストと のコラボレーションを多数手掛ける。特筆すべきはフリーランスでありながらグローバルな大企業Warner Music(UK, オーストラリア)やUniversal Music Group(アメリカ)と契約を交わし、所属アーティストであるJess GlyneやPertoといっ た世界的なアーティストたちのロゴワークを手掛けている。またファッションやアートカルチャー誌TUNICA MAGAZINE(アメリカ)、King Kong Magazine(ドイツ)などにカバーロゴアートやエディトリアルを提供、2019年から 2020年に渡るNIKEグローバル(アメリカ)とファッションブランドSACAI(日本)によるコラボレーションのグラフィック キャンペーンビジュアルが大きな反響を呼ぶ。同年、日本人アーティストKOHHがプロデュースするコンセプトストア Dogsでの個展やコラボレーションを行い、ファッションブランドACRONYM(ドイツ・アメリカ)やP.A.M.(オーストラ リア)へアートワークを提供している。2021年よりNFTアーティスト/デジタルアーティストへと自身の活動を完全に移 行し、TezosやEthereumベースの海外マーケットプレイス(Teia, Foundation, Openseaなど)にてデジタルアート作品 を発表している。Photoshopのみを使用したモーショングラフィックス、ビデオアートでその独特な作品スタイルが シーンの注目を集めている。黎明期からNFT界の世界動向を知る数少ない日本人であり、世界最先端のクリエイターた ちに影響を与えることのできるデジタルアーティストとして進化し続けている。

 

 

主なクライアント(2018~2020):

 

NIKE/USA

 

Warner Music/UK and Australia

 

Interscope Records/Universal Music Group/USA ACRONYM/USA and Germany

 

Perks and Mini/Australia

 

 

主なNFT出品マーケットプレイス:

 

Teia/Tezos

 

Objkt.com/Tezos

 

Foundation/Ethereum

 

Opensea/Ethereum

シェアする