こんにちは!
バンタンデザイン研究所大阪校キャリアカレッジ大阪校です!
今回は、11月19日に開催された特別授業<映像制作とクリエイティブディレクション>の模様をお伝えします!
ゲストとして特別講師を務めていただいたのは、クリエイティブディレクターのおおぎあつしさん。
九州新幹線全線開業CMやポカリスエットのブランドムービーなど、大手クライアントの誰もが一度は見たことがあるような広告を数多く手掛けられてきました。
授業はまず講師の今までのご経歴の紹介からスタート。
おおぎさんのキャリアの始まりは22歳で入社したデザイン事務所から。
しかしその事務所が入社半年で倒産するという経験に触れ、
「みなさんが一番心配なのは就職だと思いますが、どうなっても生きてはいけるから心配しないでください」
という励ましを参加者に投げかけられました。
その後別のデザイン事務所での勤務や1年間のアジア滞在を経て、広告代理店の子会社に入社。さらに31歳で日本最大手である代理店の電通に入社されました。
そして49歳で独立され現在の<なかよしデザイン>を立ち上げられます。
続いて、トークはおおぎさんが今までに手掛けられた作品ができるまでのプロセスに移ります。
1つ目に取り上げられたのはおおぎさんが携わられた中でも代表的なCMの一つである<九州新幹線全線開業CM>。
このCMが制作されたのは2010年から2011年にかけてのこと。
「最初営業から言われたのは、このプロジェクトが九州にとって100年に一度の大行事だということと、九州の人ってラテンなんだよね、と。それだけでした」
とおおぎさんは当時を振り返ります。
「最初は九州のブランドロゴを作ろうとか、歌や踊りを交えた楽しい企画がいいんじゃないかとか、最終的に形になることになった、市民で1つの映像を作るのはどうかとか、いろいろな案を打ち合わせで出して、ああでもないこうでもないと話しました」
当時の実際のラフデザインやコンテなども見せていただき、参加者は興味津々。
当時たくさん出していた企画について、
「予算が少ないのでできないのが分かっていても、やりたいことは『やりたい!』と言っていました。しつこく言い続けていれば何とかなったりするので、言うことが大事かなと思います」
と話されました。
「みなさん学校の課題とかあって大変だと思いますが、プロになってからは世の中に出ない100本を作ってそこから1本何とか出すということが普通になります。自分の作品がなかなか世にでなくてもへこたれる必要はない」
と、プロのクリエイターを目指す上での姿勢もお話しいただきました。
当時のプレゼンで提案資料として使用したビデオコンテも紹介いただき、普段目にすることのないクリエイティブの裏側に思わず見入ってしまう参加者も。
色々な角度での提案があったことを紹介しつつ、
「JR九州って本当にいい会社で、『大変だけど伝説を作りたい』って言ってくれたんです。そんな企業、なかなか無いと思う。もし広告関係の仕事に就きたいのなら、“広告がおもしろい会社”にぜひ入ってください。広告がおもしろくない会社って、会社自体もおもしろくないと思うので」
と進路選びに活かせるアドバイスも頂きました。
その後、プロジェクトが実際の制作段階に入ると企画段階では分からなかったたくさんの課題が明るみに。
「誰もやったことがないことだから、問題ばかり起こる」
とおおぎさんは語ります。
「やりたいことがあったら、難しいと思ってもまずテスト。みなさんはアイデアこそ大事と思うかもしれませんが、それをどうやって決められた枠組みの中で実現するかということにこそダイナミックなおもしろさがあると思います」
そして、いよいよCMが完成。撮影当日は3万人もの市民が新幹線沿線で撮影に参加したそうです。
「大変だけど楽しい仕事でした」と総括されました。
2つ目に取り上げられたのはポカリスエットのムービー。
おおぎさんは8年にわたってポカリスエットのクリエイティブに携わられています。
「ポカリスエットのプロジェクトでは、『たくさんの人と一緒にものを作っていくよろこび』を感じてもらえたらと思います」
と、最新のポカリスエットのブランドムービーの制作背景を紹介いただきました。
「20歳前後って『私、一人でなんでもできます』っていうのがかっこいいと思ったりするかもしれないんですけど、そうではなくて、チームで自分の持っていない力を発揮していかに大きいものを作るかが醍醐味だと思います」
という、おおぎさんほど経験を積んだからこそ大切に感じることも言葉にしてくださいました。
制作に関わる様々な役割も図解して解説いただきました。
「ものづくりのどのポジションであっても尊い仕事。いろいろな戦い方があって、正しい道にいこうとする必要はないです」
というおおぎさんの言葉は、今学んでいるメンバーにも勇気が湧くメッセージかもしれません。
企画の最初の段階では「若さの肯定」や「生命力」といったシンプルなキーワードからコンセプトを膨らませていったそうです。
「モノを売るためのCMではあるのですが、まずはそれを見た人にどう思ってほしいのかをチーム全体に僕から共有しました」
とおおぎさん。
そこから打ち合わせを重ね、“FIND MY WAY”というコンセプトが立てられました。
「何百人という人間で一つのものを作るときに、こういう言葉がないと同じ方向を向けなくなってしまう。みんなが一つの方向を向くためにこういうコンセプトを言葉にすることが大事になります」
さらに、そこから出た2つの企画コンテをご紹介。
「人間って動きながら考えが変わっていくのが当たり前なので、企画も変わっていくことを恐れずに変えていったほうがおもしろくなるんですよ」と触れながら、「雲」をモチーフにした企画案について説明していただきました。
企画についてクライアントのOKがでると、次は制作プロダクションとのやりとりが始まり、企画コンテをもとにして映像監督が演出コンテやコマ割を作成します。
鍵になる雲の演出が技術的に可能かといった検証も含め、企画がより具体的な輪郭を持ち始めます。
おおぎさんは
「あのざっくりした企画コンテからここまで引っ張ってくるんだから、監督ってすごいですよね」
と、共にクリエイティブを作る監督という役割を称えました。
その後さらに制作は進行していき、撮影に使用する装置の検討や楽曲に起用するアーティストの交渉など、様々な役割のスタッフが奔走する中で、おおぎさんが各セクションをまとめて舵を取ります。
今回のプロジェクトではメイキングを収めた映像もリリースされており、ここまで練ってきたものを土台に撮影現場で沢山のスタッフが動く様子を見せていただきました。
クリエイティブディレクターの責任について、
「ここまで来ると、自分が最初考えたことがいろいろな人を巻き込んで、いいものを作らないと本当に申し訳ないという気持ちになってくるんです」
とおおぎさんは話します。
この制作に携わったチームの集合写真を見せていただきながら、
「社会人になるの嫌だなって思っている人もいるかもしれないですけど、一つのものをみんなで作るのって本当に楽しいですよ」
と話すおおぎさんの言葉が印象的でした。
最後の質問タイムでは、参加者から続々と質問が寄せられました。。
―おおぎさんのスキル、できることって何ですか?
「クリエイティブディレクターはチームのリーダーだから、人から嫌われているとできない仕事。独立してからはなおさら、あの人と仕事したくないと思われたら誰も頼んでくれない。だから、みんなの幸せをどれだけ考えられるかというのがクリエイティブディレクターのスキルかもしれません」
―意見がぶつかったときはどうしていますか?
「とにかくその人の話をまず聞くこと。内心全然おもしろくないと思っていても、黙って聞いていたら『ここはおもしろいな』と思うことがあったりする。ぶつけた結果共存できる道が出てきたりするので、ぶつかったときこそチャンスかもしれないですね」
―撮影後に撮り直したいとかやり直したいと思ったことはありますか?
「常にあります。何でもやってみないと分からなくて、やってみて初めて『自分がやりたいのってこういうことだったんだ』という気付きがあったりする」
―クライアントなどであまり融通の利かない相手に接するときはどうしますか?
「向こうが折れるまで言います。大体人間って同じことを3回も言われたら『もう勝手にして!』ってなる。単純なことですけど、気合を入れてお願いしたらいろんなことができるようになります。場合によってはその会社の社長とか、自治体とか、そのお願いを最後までやったもん勝ちですね」
他にも多くの質問が寄せられ、メンバーが迷ったときに参考にできそうなヒントをたくさん頂くことができました。
非常に奥が深く、やりがいのあるクリエイティブディレクターという仕事。
バンタンの在校メンバーにも、将来おおぎさんのように多くの人を巻き込んだ作品を生み出せるクリエイターになってほしいですね◎
おおぎあつしさん、貴重なお話をありがとうございました!